河崎賢三医師インタビュー①
<スポーツ現場での安全管理について>
Q:トレーナーやドクターのいないスポーツ現場では、ケガの対応はコーチや保護者が基本対応していると思います。万が一に備えて身につけておいてほしいスキルや知識、事前に準備しておくべきことはなんでしょう?
A:やはり頻度は少ないのですが、命に関わること、への事前準備は絶対必要ですね。コンタクトスポーツにおいてはもちろんですが、バレーボールのように2つに分かれてプレーするような場合でも、自チームの子とぶつかる、ということもあります。ですから、心臓震とうへの対応、ということでAEDの使用、心肺蘇生法の知識を身につけておいてほしいですね。特に指導者には必ず身につけておいておいてほしいです。
Q:その心臓震とう、の予防として少年野球では「胸部保護パット」というものも市販されていますが、その効果については先生はどうお考えですか?
A:効果は、ある、と思いますが、保護パットをしているから、胸にあててボールを取れ、という指導は間違っています。安全のために開発されたものが悪用されてしまう場合もあるようです。まずは安全なボールの取り方、についての指導を徹底すべきです。
Q:心臓震とうを予防するためにチームとして事前に行っておいた方が良いことはありますか?
A:子ども達は学校において検診を受けていると思いますので、その結果を受けて活動をしている、というのは大前提だと思います。チームに所属する子が運動が可能なのかどうか、そして喘息やアレルギーなどに関してなども、指導者の間で共有しておくべきでしょう。
Q:保護者や指導者の方も、「スポーツ現場で重大な事故はめったに起こらない」と思っている方もまだ多いのかな、と感じます。現場にも多く出られている河崎先生は、国内の学校における部活動やジュニアスポーツでの危機管理意識、についてどのように感じられますか?
A:危機管理意識は残念ながら非常に低い、と感じます。
Q:それはどのようにすれば変えられるでしょうか?
A:保護者としては、変えたいな、と思ったり、必要だな、と理解しても子ども達のカテゴリーはどんどん変わっていきますね。小学生、中学生、そして高校、と。さぁ変えよう、と意見が言えるくらいになっても、すぐ次のカテゴリーになってしまうので、まいっか、ということになってしまいます。ですから、各競技団体の連盟などがきちんと指揮を取るべきなのだと思います。
Q:そのシステムがきちんと構築されているな、と感じるのはどのスポーツですか?
A:サッカーかな、と思います。指導者養成にしろ、ドクターの帯同システムにしろ、国内のルールだけでなく海外のシステムを取り入れている、という面でやはり一歩先を行っていると感じます。
他の競技において、経験者がそのまま指導者になれてしまったり、上手い人が指導者になってしまっている、というシステムは今後どんどん変えていくべきだと思います。
Q:特に、首から上、頭頸部の外傷は怖いな、と感じるのですが、一般の人は何を知っておくべきでしょうか?
A:一番は、やはり「意識」でしょう。意識があるかないか、なければかなり重篤な状況ですから早急な対応ができるようにしておくべきでしょう。
<子どもとスポーツ>
Q:部活動もしくはジュニアスポーツの、そもそものあるべき姿、子ども達の理想的なスポーツとの関わり方とはどのようなものだとお考えですか?
A:自分たちでする、ということ、です。
Q:と、いいますと?
A:習い事、ではなく、自分たち(プレーヤー、子ども)が主体で行う、というのがそもそものあるべき姿だと思います。
基本、子ども達の自主性にまかせ、周りの大人たちは子ども達で収拾がつかなくなった場合のみ助ける、というのが理想だと思います。今の時代はなかなか難しい面もあるとは思いますが・・・。
Q:保護者の関わりについてはいかがでしょう?
A:子どもがやりたいスポーツに関して、十分に理解してあげる、という事がとても大切だと思います。子ども自身がどのレベルでやりたいのか?ということをきちんと理解してあげる事ですね。
お遊び程度で良いのか、ガンガン上を目指してやりたいのか、ということを理解し、それに応じたサポートができればいいですね。
仲良しの友達と楽しくできればいい、というような子が、1学年30人くらいのいわゆる「強豪校」と言われるようなチームに入ってしまうと、レギュラー争いは非常に厳しく、ずっと補欠で3年間終わってしまったり、燃え尽きてしまったり、合わないと苦しい3年間を送る、という事は大いにあるわけです。時にブランド力に魅力を感じることもあるかもしれませんが、本当にそのチームが自分(わが子)に合っているのか、自分(わが子)が望む体制なのか、というのは親も含めてきちんと知っておくべきだと思います。
Q:国内のジュニアスポーツにおいて改善すべきはどのようなことでしょう?
A:私は大会の在り方、だと思っています。トーナメントではなく、リーグ戦にすることによって、子ども達も年間通じて色々なチームと対戦できますし、個人への過負荷も減らせると思います。
様々な所でも提言が出されていますが、小学生の全国大会は必要ないと思いますね。
Q:ジュニアスポーツや部活動における指導者資格制度、の必要性についてはどのようにお考えですか?今後必須にすべきでしょうか?
A:必要でしょうし、必須にすべきだと考えます。指導者資格、ということであれば、現在の資格の中では私は「教員免許」のカリキュラムが一番適していると思います。
Q:教員免許、ですか?
A:そうです、教員免許のカリキュラムの中には、子ども達への接し方や教え方、子ども達の成長(心や身体)に関しても学びますから、これを必須にするのはどうかな?と思いますね。
Q:現在、部活の指導ができる、外部指導者資格、というのもありますが、そのスポーツのスキルが教えられれば良い、ということではない、ということですか?
A:子ども達を指導する、ということでいうと、そうだと思います。
加えて、「見本を見せられるか」というところも、特にジュニア世代の子ども達への指導では大切なポイントです。子どもというのは、どんなに口で指導してもなかなか理解できません。それよりは、「こういう風にやるんだよ」と見本を見せてあげるのが一番理解しやすいのです。
私も子ども達の野球の指導に関わることもありますが、大学生を連れて行き、彼らに見本をしてもらいます。それが一番子ども達の理解が速いですし、大学生の見本プレーを見た後の子ども達のプレーは非常に良いものになります。
体育などでもそうです。動きの見本を先生が見せられられない限りは、子どもたちはできるようになりません。