専門家インタビュー
早稲田大学大学院 大伴氏(4)
Q:スポーツペアレンツの多くは、指導者の方はみなスポーツで起きる脳震とうの怖さや対処法をご存じなのでは?と思っている方も多いかと思います。指導者における教育システム、などは国内に存在しますか?
A:脳震とうに特化したものはありません。
Q:保護者が家庭で気を付けるべきことはありますか?
A:様子が変だと思ったら話を聞いてあげる事、そして指導者と連絡を取ってください。保護者サイドから指導者サイドに発信することはとても重要です。
また、お子さんが脳震とうを受傷した場合には、1人にしないで観察するようにしてください。夜はたとえ年齢が上の子でも一緒に寝てください。急な変化や症状がぶり返すこともあります。
特に、年齢が下の子になると嘔吐の症状が良く見られます。寝たまま吐いてしまうと、嘔吐物を詰まらせてしまう危険性があります。
Q:脳震とうは症状が時間差で出てくることもある、とか。
A:その通りです。夜に症状が悪化する可能性はあります。
Q:防具(ヘルメットやヘッドギア)の重要性やその効果についてお話しを聞かせてください。
A:防具は傷などを防ぐことはできますが、基本的に脳震とうはそれらの防具では予防できない、と言われています。
Q:頭の外側ではなく、脳の外傷だから、ということでしょうか?
A:そうです。
また、アメフトなどではヘルメットやショルダーパットを身につけると、強くなった気がして、技術が伴わないのに思い切り突っ込んでしまう子などもいます。まずはきちんとした技術や体力、筋力をつけることが重要である、と指導者の方から伝えてほしいです。
Q:マウスピースを装着すると脳震とうが起こりにくい、というのは本当ですか?だとすれば中学生くらいから装着すべきでしょうか?
A:マウスピースも、口の中のケガを防ぐことはできますが、脳震とうの予防にはなりません。歯を食いしばることで力が入りやすくなる、というデータは確かにあるのですが、それは首の前後の力に関して、なのです。
しかし、実は脳震とうは回旋の動作で発生することが多いので、マウスピースを装着しても予防にはならないと言えると思います。
Q:トレーナーやドクターがいない現場において、脳震とう、という明確な症状が良く分からない場合、プレーに戻すかどうかが一番の悩みだと思うのですが、スポーツ医学の知識がない人間が参考にできるものは何かありますか?
A:まずは、脳震とうがどういうもので、どんな症状になるのか、ということを知ることです。分かりやすいのはラグビー協会が出しているSCAT2です。
そして少しでも変だな、と思ったらプレーには戻さない方が安全です。
あとは、選手への教育です。多くの選手を抱えるチームであれば、指導者の方がどんなに目を光らせても限界があります。そこは、選手同士でのチェックが有効になります。プレーの様子がおかしい、ケガをしているようだ、という選手をみつけたら、すぐに指導者やトレーナーに報告するよう、選手に徹底するのです。
グランドの中にいる選手が一番変化を発見しやすいのですから。
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