茨城県 水戸剣道部員死亡事件 

<水戸啓明高等学校剣道部 熱中症死亡事件>

【事件内容要約】

2009年 8月8日、水戸短大付属高(現水戸啓明高)の剣道部合宿で、1年生の高井竜也さん(当時16歳)が熱中症になり、亡くなりました。

 

竜也さんは合宿2日目の8月7日午後、夏合宿練習中に熱中症の症状で自力で立てなくなっていたにもかかわらず、先輩やOBに無理やり立たされ、叩かれたり蹴飛ばされたりされ、厳しい稽古を続けさせられた後に倒れました。

 

倒れた竜也さんを見つけた部員が「白目をむいて、口から泡をふいています」と顧問に告げたにもかかわらず、顧問はその様子を見に行くことなく、結局その場に遅れてかけつけたお母様が救急車要請をし、搬送されました。

 

しかし、翌8日午前、熱中症による多臓器不全で竜也さんはこの世をさりました。

 

ご両親は、その後顧問と学校を運営管轄している田中学園に損害賠償を求める訴訟を起こされましたが、2013年、業務上過失致死容疑で送検されていた当時の顧問教諭を、水戸地検が不起訴処分にしました。

 

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この度、スポーツペアレンツジャパンでは、この水戸で起きたスポーツ事件を、お母様のご協力のもと記事にまとめさせていただきました。

 

以下、お母様から頂戴した資料とお写真をもとに事件内容をまとめます。

 

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私の息子、竜也(当時16歳)は、2009年8月8日、剣道部の合宿中、しごきによる熱中症で亡くなりました。

 

学校とは安全な所、私はそう信じ信頼し疑いもせず通わせていました。それなのに、竜也が家に戻ってきた姿は、あまりにも変わり果てた姿でした。

悔しそうで何か言いたそうな竜也の顔、私は一生忘れることは出来ません。

 

合宿へ行く前、ソファーに座り弟と冗談を言いながら笑っていた彼の笑顔が、私が見た最後の笑顔でした。

 

竜也は五人兄弟の長男です。小さいころから体を動かして遊ぶのが大好きで、友達と泥んこになりながら遊ぶ活発な子でした。

兄弟とも仲が良く、買い物に行くときも小さい弟の手をぎゅっとつなぎ、どこへ行くときも仲良く手をつなぐ姿が何度とも思い出します。

 

弟や妹たちは、竜也の膝の上が大好きで、彼があぐらをかいた所にすぽっと入れて揺らすと、兄弟たちは安心するのでしょう、気持ちよさそうに寝てしまうことがありました。

 

息子が小学校三年生の時の事です。

クラスのお友達と些細なことで喧嘩になり、お友達に頬を殴られて、竜也は握り拳を上げたそうです。ですが「もう、いいや」とその手を下げたそうです。

 

竜也は、「自分が殴られていたかった、僕が殴ったら、その子も痛い」と我慢したそうです。そんな優しい子でした。

 

学校から帰ってくると、学校の事、部活の事を面白おかしく話してくれて、家族でその話をいつも笑いながら聞いていました。明るく、面白い息子の話しは私の楽しみの1つでもあり悩んだり落ち込んだりした時、大きな力となり心を明るくしてくれました。

 

小学校の時は野球部のキャプテンを務め、ムードメーカーとしてみんなから親しまれる子でした。中学の時もたくさんのお友達と楽しく遊び、歌の得意な竜也はカラオケに行ったりと、充実した毎日を過ごしていました。

 

しかし、8月7日、私が見た竜也はとても竜也とは思えない姿でした。

 

合宿の二日目に起こった事は、とても信じられないことでした。

私は最初、あんな暑い中で少人数での*掛かり稽古をやったことで竜也を死に追いやったのではと思っていましたが、真実は違っていたのです。

 

*掛かり稽古・・・基立ち(受ける側)に対し、掛かってくる側が色々な技を素早く打ち込んでいき、15秒~30秒間隔で次の人へ交代する。

 

前半の掛かり稽古、当時1年生だった息子は3年生だった先輩に基立ちの3年生のところへ一人で掛かっていき、その他の部員達は基立ちの顧問のところに交代で掛かっていました。

 

息子は、前半30分、後半30分、1対1でのけいこをしていたことになり、前半の稽古で2,3回倒れていました。

 

前半の掛かり稽古が終わり、休憩10分程度はさみ、後半の掛かり稽古になると、基立ち、3年生、OB2人のところに息子が一人で掛かっていかされ、2対1となります。

 

そのうち道場全体を使っての広範囲での稽古になりました。

 

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